南淵医師は、病院側の対応にも疑問を呈する。
「本来、大学病院の強みは、ひとつの手術に“多くの目”が入ることです。心臓外科の場合、外科医、麻酔科医、看護師など、場合によって10名前後がオペ室に入り、それぞれが異変に目を光らせる。これだけの人数の患者に合併症が発症し、そこまでいかないと本格的な調査さえしないというのは、大学病院の機能を果たしていると言えるのか」
冒頭のA氏は、病院からの連絡が来ないことにしびれを切らし、自ら担当医の教授に電話すると「現在、院内で問題が起きており、直接説明するので病院まで来てほしい」と言われた。
「その教授からは、『実は高齢の方が合併症で亡くなられたので、手術を止めて調査しています』とだけ告げられました。6件も合併症が起きていたなんて、その時は一言も聞いていません。
帰り際、教授から『わざわざ来てくださりありがとうございます』と茶封筒を手渡されたので確認すると、3000円分の商品券が入っていました」
A氏はその後、知人を通じて別の病院に転院し、手術を受けた。
「その際、執刀医からは、『すぐに手術しなければ命の危険があった』と言われました。あのまま自治医大の手術再開を待っていたら、私はどうなっていたことか……」(A氏)
前述の通り、同センター心臓血管外科の手術数は年間1000件近い。どれほどの心臓疾患患者が行き場を失っていたのか。