「新宿こども囲碁教室」で70人以上の未就学児を教える藤沢一就八段
「毎日碁の勉強をするというのは、本人もすごいのですが、親のほうがなかなかできないものです。毎年、キッズカップでお会いすると、連続勉強日数が〇日になったと、着実に増えていったので、これはただ者ではないと思いました」
翌年、仲邑さんは1回負けて3位となった。これも悔しくて、4時間の勉強を7時間に延ばし、ついに幼稚園年長のときに優勝を果たした。7時間以上の勉強は現在まで続けられている。
「キッズカップが、菫ちゃんに火をつけたのは間違いありません。目標を与えてくれたのです。また、年少からそんなに真剣に碁の勉強ができるのだ、ということを目撃した保護者のみなさんにも衝撃を与えました」(前出・原四段)
キッズカップ出身のプロ1号が仲邑さんで、2号が上野さんということになる。原四段もまた、東京都千代田区で「日本棋院子ども囲碁サロン支部」を主宰する。
「幼稚園受験のためや、教養を身につける習い事として、教育熱心な30~40代のママさんたちに、囲碁は支持されています。菫ちゃんが優勝したあと、キッズカップに出るために習いたいというお子さんが何人もいらっしゃいました」(同前)
昨年3月の第7回大会では、年少で四段という天才でも3位、というほど有段者の出場が多くなった。7年間で飛躍的にレベルが上がっているのだ。
インターネットの普及で、どこにいても情報が手に入り、24時間対局もできるようになった。またAIソフトが誰にでも利用できるようになり、研究もしやすくなるなどの環境の変化を背景に、囲碁人口が低年齢化し、裾野も広がってきた。
この勢いが続けば、囲碁界の明るい未来が予想できる。小学生プロは次々と誕生していくだろう。年少から本気でやらないと、世界を目指すのには間に合わない。世界王者を日本が奪還する日も遠くないかもしれない。
●撮影/内藤由起子(上野梨紗さん、藤沢一就八段)