「展覧会が実現するまでには、長い時間が必要です。最初のアイディアが生まれ、パートナーである美術館や共催者とコンセプトを共有し、開催時期や場所が決まるのは、開催3~5年前のことです。そこから展覧会の構成を固め、出品作品の交渉に最低でも2年はかかります。その間に展覧会をサポートして下さる協賛社や協力者を見つけなくてはなりません。そして1年前には告知活動や具体的な準備をスタートするのですが、そこからは怒涛の1年です。
大事な作品を貸し出して下さる所蔵家、作家、ご遺族・著作権継承者との調整・協議はもちろんのこと、広報物の作成に携わるデザイナー、コピーライター、印刷会社の方、図録制作に携わる執筆者、翻訳者、編集者の方、作品の安全な輸送に携わる航空会社、輸送会社、保険会社の方、会場設営に携わる空間デザイナー、照明デザイナー、施工会社の方、告知活動に携わるPR会社、広告代理店の方等々、実に多くの人と長期間にわたって協働します」
こうした長期にわたる準備工程があるのだが、こうした仕事に女性が向いていると森氏と大島氏は語る。
「美術業界は、非常に女性が働きやすい職場です。私も含め、在京各紙、テレビ局の文化事業部では女性が多く活躍しています。1986年に男女機会雇用均等法が施行され、弊社でも事業局初の女性総合職が1989年に誕生しましたが、その方は現在、名古屋本社の文化事業部長をつとめていますし、部次長も同じく女性です。東京でも現在の部長は男性ですが、女性部長・女性部次長というツートップ体制だった時期があります」(森氏)
今回のル・コルビュジエ展にも多く女性が係わっている。東京新聞の3人の担当者に加え、国立西洋美術館の馬渕明子館長、日本側修復家の岩井希久子氏、スイスやフランスなどの美術館からクーリエとして派遣された学芸関係者、開会式のため来日したル・コルビュジエ財団のブリジット・ブーヴィエ事務局長も女性だ。
◆女性は“渦”を作るのが上手
「時には作品の輸入や輸出、作品展示の立ち合い作業などで、体力や気力が求められる現場であっても、今では多くの女性が普通に担っています」(大島氏)