ようやく春らしい気候になり、春物の洋服を新着しようと買い物に出かける人も多いだろう。だが、自分の体系にぴったり合う洋服がなかなか見つからないと嘆く人もいるはず。近年はメンズでもレディースでも大きなサイズの専門店はあっても、逆に小さなサイズを豊富に取り揃える店は数少ない。一体なぜなのか。ファッションジャーナリストの南充浩氏が解説する。
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洋服は極めてサイズに厳格な衣服だといえます。布を巻き付ける方式の民族衣装なら、ある程度のサイズは調整できますが、洋服はそんなわけにはいきません。とはいえ、完全に体に貼りつくほどのジャストサイズだとレオタードみたいになってしまいますから、幾分かのゆとりがなくてはなりません。
洋服の場合、平均的な体型を集めたJIS規格というものが存在し、それを基にSMLなどのサイズが決められています。ただし、このサイズはブランドごと、洋服のデザインごとに少しずつ異なり、例えばユニクロのMなら着られるけど、若者向けブランドのMだとピチピチになってしまう──ということは珍しくありません。
しかも、近年はJIS規格のSMLでは間に合わない体格の人も増えています。とくに街中を見ていると170cm前後ある背の高い女性が増えたと感じます。こうした長身の女性はJIS規格のLサイズでも手脚の長さが足りません。
最近ではベルーナやベルメゾンなどの通販ブランドによっては、Mサイズだけど背の高い人向けに「TM」というサイズの商品も販売されています。このTとは「tall(背が高い)」の意味で、「TM」とは「tallなM」を示しています。
このほかにも身長は平均的だけど非常に恰幅の良い女性もおられ、そういう人向けにはLL、3L、4Lなどのラージサイズが一部のブランドからは展開されています。ラージサイズの需要は確実にあるものの、そのサイズを展開しているブランドの数はあまり多くないことから、買い物難民が発生しやすい状況にあります。逆にそれを扱っているブランドやショップを見つけることができれば、選択肢が少ないこともあり、ロイヤルカスタマーになってくれます。
こうした需要は決してマスでボリュームゾーンにはなりませんが、常に一定数量あります。ですからそれを取り込もうとする企業がそれなりに現われ始めています。