実は、首都圏の歯科医院は自費診療の比重が大きいので、「金パラ高騰」の影響は比較的少ないという。

 一方、関西やその他の地方では、保険診療が経営基盤となっているので深刻だ。赤字経営に耐える歯科医がいる一方で、不正請求に手を染める者もいる。前出とは別の歯科技工士が、こんな証言をした。

「先生(歯科医)の中には、2つの技工指示書を出す人がいます。一つは、私にニッケル・クロム合金を使った銀歯の製作を指示する内容。もう一つは金銀パラジウムで保険の診療報酬を請求するためのものです」

 ニッケル・クロム合金の金属代は、クラウン一つで約100円でしかない。この手口を使えば、銀歯治療1回につき、約5000円以上の利益を得ることが可能だ。大阪、兵庫、九州で同様の証言があった。

 患者は自分の歯を守るために、銀歯以外に治療の選択肢があることを知ってほしい。虫歯の範囲が限られている場合は、「コンポジットレジン修復」による治療が、銀歯よりも歯を削る量が少なくて済む。

 クラウンを被せる大きな虫歯については、「CAD/CAM冠」が保険適用になり、急速に普及している。これはレジンにセラミックスのフィラーを混ぜた白い素材だ。当初は脱落したり、破折する(割れる)ケースが多く報告されたので、歯科医の評価は低い。

 だが、その実態調査を行なった、末瀬一彦・日本デジタル歯科学会理事長によると、適切な接着操作を行なっていなかったことなどが脱落の要因だったという。

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