去年4月に改定された金パラの価格「1458円/g」から、現在は「約1900円/g」に上がっているので、変動幅は約30%だ。5%以上の価格変動がありながら、厚労省は診療報酬を改定しなかったことになる。
「パラジウムの価格が、為替相場のように上下している時期は、診療報酬の改定で逆ザヤを解消できていました。しかし、投機対象となって価格が一方的に高騰している状態では、歯科医院の逆ザヤは累積していくばかりなのです」(同前)
歯科の診療報酬は、年間約2.7兆円。安倍政権になってから社会保障費の抑制が強いられている以上、厚労省としては金パラの公定価格を上げたくないのが本音ではないか。
こうした不条理とも言える状況に、歯科医が甘んじているのには理由がある。日本の歯科医院の約9割が、保険診療を中心に経営しているが、厚労省の下部組織が診療報酬を厳しく審査する。厚労省に対して、歯科医が問題点を指摘することは、“猫の首に鈴を付ける”ようなものだ。
「金パラ高騰」に対して、行き場のない歯科医の嘆きが筆者に寄せられている。
「治療するほど、赤字が増える」
「金パラで治療するのは、もう厳しい」
「10月の改定まで、赤字経営を続ける自信はない。後継者もいないので、閉院を検討している」
◆患者を騙して利益を確保