大臼歯にクラウンを被せる場合、「金パラ」を3.5g程度使用するので、次の計算式になる。

「3.5g×442円=1547円」

 大臼歯一つで、「1547円」の赤字は、経営を大きく圧迫する。

「この1年間に歯科業界全体で発生した金パラによる赤字を試算すると約28億円でした。パラジウムが不安定な価格変動をしている以上、金パラが保険診療の材料として相応しいのか疑問です」(歯科医・浦川修氏)

 厚労省では、金パラの価格が5%以上変動した場合に限り、中央社会保険医療協議会(=中医協)で、診療報酬を改定する。時期は年2回、4月と10月。ちょうど来月は改定時期にあたるので、厚労省保険局に確認したところ、意外な答えが返ってきた。

「すでに2月の中医協で、金パラの公定価格は改定しないと決定しました。次回の10月までは、現状維持の方針です」

 このまま「金パラ」の高値が続くと、歯科医院は10月まで「赤字診療」を続けることになる。

 これは歯科医院にとって死活問題であるのと同時に、患者にも様々な不利益をもたらすことが予想される。全国保険医団体連合会の馬場淳・副会長(歯科医)は、厚労省の対応に疑問を呈する。

「中医協が金パラの公定価格を決定する根拠(資料)を、厚労省は明らかにしていません。完全にブラックボックス状態なのです。私たちの団体が情報公開を求めたところ、厚労省は市場に影響を与えるという理由で拒否しています」

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