東レの日覚昭広社長(時事通信フォト)

 50代のF氏は一貫して営業畑を歩み、海外向けの大プロジェクトを任される立場にあった。東レ関係者からは、「(海外事業にかかわる)総合商社との交渉に長け、日覺昭廣・代表取締役社長も評価するエリート」という評も聞かれた。

 では、どんな取引が行なわれたのか。東レの発表で〈取引関係のない第三者〉とされた企業の一社(以下、P社)の問題となった契約に関する資料を入手した。

「東レ製品を販売するO社」が水処理装置(地下水の浄化装置)を売却する売買契約を結ぶにあたり、F氏は「東レがO社の連帯保証人になる」という内容の契約書をP社と交わした。

 その内容は実に奇妙だ。

 売買契約は、「O社からP社へ1台600万円で50台を販売する」というもの。そして、連帯保証契約は、「3か月後までにP社が転売できない場合は、O社が1台700万円で買い戻す。その際に東レは買い戻し資金の保証を行なう」──という。つまり、“販売額に100万円上乗せして買い戻す”という、およそ商売とは思えない取引である。

 問題となったのは、日覺社長の名前の隣に「社印」が捺印された連帯保証契約の委任状だった。この契約書には、日覺社長が登録した「印鑑証明書」も添付されていた。F氏から契約を持ちかけられたP社の幹部が明かす。

「弊社はもともと水処理とは縁がないが、絶対に損が生じないということで契約した。Fさんからは、“外国に販売する予定のものが宙に浮いてしまって困っているから、とりあえず買ってほしい”と説明された。契約書類は揃っているし、何より東レの連帯保証があるから信用した」

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