日本を代表する大企業が「巨額の不正問題」に揺れている。幹部社員が「巨額の不正契約を交わしていた」というのだ。経緯を辿っていくと、いくつもの奇妙な点が浮かび上がってくる。ジャーナリストの伊藤博敏氏がレポートする。
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発端は、2月12日に東レが公表したリリースだった。
〈当社の元従業員が、水処理システム装置の海外向け販売において、当社とは直接取引関係のない第三者に対して、当社の買戻義務や連帯保証義務を定めた書類を無断で作成し、それを交付した〉
不正行為(有印私文書偽造と同行使等)を働いたとして、同社の水処理システム事業部の営業部長・F氏の懲戒解雇(昨年11月)も公表。〈刑事告訴を検討している〉と明らかにした。
説明するまでもなく、東レは売上高2兆円を誇る日本最大の繊維・化学メーカーだ。榊原定征・前会長(現・相談役)は昨年5月まで経団連の会長を務めていた。
「不正契約」に関わった業者などに取材すると、不可解な金の流れがあった。
◆600万円で売り、700万円で買い戻す