退位に伴い、三種の神器をはじめ、宮中祭祀に使われる太刀や屏風などの品々が、現陛下から新天皇陛下に引き継がれる。昭和天皇崩御の時には約20億円の遺産があったが、退位の場合、財産はどのように継承されるのか。そもそも皇室にはどのくらいの財産があるのか。皇室ジャーナリストの神田秀一氏が解説する。
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戦前の天皇家は日本一の地主とも言われ、皇居、赤坂御用地、鴨場、陵墓、御料牧場などを合計した保有土地面積は長野県に匹敵するとも言われた。
現在、皇室関連の土地は、天皇皇后両陛下がお住まいの皇居(約115万平方メートル)、東宮御所や秋篠宮邸がある赤坂御用地(約51万平方メートル)、京都御所や3つの御用邸(葉山・須崎・那須)などがあるが、すべて国有財産だ。終戦後、憲法88条によりすべての不動産は国に移管され、皇室に供される「皇室財産」となった。天皇をはじめ皇族方のお住まいは、国から借りている“借家”ということになる。
そのほか皇居や御用邸に関連する皇室財産に、「船舶」と「地上権」がある。「船舶」は皇居の内堀で作業に使用する船だ。「地上権」は、例えば一般車両が通行できるようになっている那須御用邸の一部の道路である。見た目は地方公共団体の道路だが、土地は宮内庁所管で賃料はとっていない。
【PROFILE】神田秀一●1935年東京生まれ。テレビ朝日にて1978年から宮内庁担当記者。1995年に退社後、フリーの皇室ジャーナリストとして活動。著書に『心に響く皇室の所作』(辰巳出版)がある。
取材・構成■祓川学(フリーライター)
※SAPIO2019年4月号