先の「健康」志向を反映した施策では介護施設向けに噛みやすく、飲み込みやすい商品を開発。牛丼と豚丼、うなぎの蒲焼きの3アイテムで、塩分量を通常の約半分(0.9グラム)まで抑えながら、それぞれ具材を小さく切りやわらかく煮込んだ「やわらか」か、舌ですりつぶせるまで刻んだ「きざみ」という2つの性状にわけている。食べ手の嚥下機能に応じて、ご飯も白米とおかゆの2種類から選ぶことができるようなアイテムを開発済みだ。
吉野家だけではない。大手3チェーンともアイテムの開発や売り方に工夫を重ねている。松屋フーズはロシアに進出。4月にもモスクワに1号店をオープン予定で、今後5年間で約30店のオープンを目指すという。すき家も”出前”で先行する吉野家を追うように「ウーバーイーツ」に対応した宅配サービスをスタートさせた。
世界展開に販路の拡大。各チェーンとも牛丼以外の飲食業態も手がけている。「うまい・安い・早い」からの脱却後、各牛丼はどのような成功モデルを描くのか。明治の頃から100年以上に渡り、親しまれてきた庶民食はどのように変わるのか。できることなら、庶民食としての「うまさ」だけは手放さないでいてほしい。