「帽子のロゴを龍谷大の『R』にするとか、胸に大学名を入れるという噂があり、私は当時の学長に直訴した。“デザインを変えるなら、ユニフォームを抱いて学校の屋上から飛び降ります”と。最終的には、左肩に漢字で『龍谷大学』とできうる最小の刺繍を入れることで落ち着きました」
ベンチ入りメンバーは、夏の予選と春夏の甲子園だけは胸の文字が刺繍のユニフォームを着る。スタンドで応援する選手は、胸の文字がプリントされたものだ。ユニフォームを差別化し神聖化することで、部員の競争を促すのだ。
「誰もが手にできるものではないからこそ、引き継がれていく伝統がある。着られなくなったユニフォームも、捨てません。すべて保存しておいて、OBが集まった時などにプレゼントすることもある。“メルカリで売るなよ!”と注意しています(笑)」
平安は昨夏の100回大会で、甲子園100勝を達成した。今年の選抜では、ズボンをもうひと回り細身に変更し、2014年以来の日本一を目指す。
(文中敬称略)
◆取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2019年4月5日号