出会い系サイトを使った詐欺も、当初は男性が騙されるのみだったことを思い出す。男性は、女性や女性のふりをしたサクラや業者に騙され、下心を存分に弄ばれた挙句、多額の金銭を失った。こうした被害が知れ渡ると、業者は次に女性へとターゲットを広げた。最初は、ジャニーズタレントや俳優であることを匂わせ女性を誘惑するなどという、側から見れば信じられないような詐欺の手法ではあったが、業者によれば一定の成果(被害)があったというから驚いたものだ。

 そして今回のパターンでは、女性らはアダルトコンテンツを利用したことに加え、違法行為に加担しているかもしれないという後ろめたさも感じている。ターゲットにしやすいと狙われた女性たちの元には、架空請求や出会い系サイトのメールが届くだけではすまされない。

 栃木県在住の濱村早希さん(仮名・30代)はかつて、ネット上の違法サイトに会員登録し、多数のBL作品を閲覧していた。そのうち、架空請求などの迷惑メールが1日に多い時で数十通も届くようになったが、その中には結婚相談所や占い屋、さらには女性向けアダルトグッズの専門店から、自宅にダイレクトメールが送りつけられるようにまでなってしまったと話す。

「ネットで知り合い、オフ会で会ったこともあるBLサークルの友人は、架空請求のメールが届き、家族や彼氏に知られたくないと30万円も支払ってしまいました。私は無視していればよい、と動じませんでしたが、実在する結婚相談所などから自宅に直接資料が送られてきたことに恐怖を覚えました。

 BLのサイトに登録する際、確かにハンドルネームや生年月日、メールアドレスなどを登録した記憶はあります。でも住所なんて絶対に書いていない。独身で親と同居しているので、アダルトグッズのカタログが届いた時には本当に焦りました。なぜ登録していない私の住所がバレてしまったのか。朝夕、家族の誰よりも早く郵便受けをチェックするようになってしまった」(濱村さん)

 前出の名簿業者によれば、合法の大手通販サイトに登録された情報が流出し、違法サイトの登録者情報と紐づけられることで、悪用されやすいリストがいとも簡単に作成されているという。

「表の情報と裏の情報が合わさるというパターンです。アダルトサイトや違法サイトなどに実名や住所を登録する人はいないでしょうが、メールアドレスを登録する人は結構いる。通販サイトに実名や住所、そしてメールアドレスを登録していて、そのデータが流出すれば、メールアドレスから個人が特定できます。アダルトや違法サイト利用歴のある個人情報ですから、詐欺だけでなく脅迫にも利用できてしまう」(名簿業者)

 詐欺に使われるだけならまだマシかもしれない。オレオレ詐欺が「アポ電」により強盗殺人事件に発展したように、立場の弱い女性のデータが悪意のあるグループの手に渡ってしまったら、何をしでかすかわからないのである。そもそも、違法サイトなどを利用しない、ということが大前提だが、自身の個人情報が流出してもトラブルを回避できるよう、普段からメールアドレスを使い分けたり、むやみやたらに氏名や住所を出さないなど、防衛手段についてよく考えておく必要があるだろう。

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