ステージを降りて握手するシーンも
還暦を迎えた昨年10月、引退を決断。周囲には突然のように見えるが、森の心には秘められた思いがあった。
「40歳を過ぎた頃から、早く60歳になりたいと考えていました。実際になってみると、子供も巣立ったし、自分の肩の力が抜けて、これから新しい人生が始まる予感がした。引退はすべて一人で決めました。スタッフに止められましたが、一度こうと決めたら変えない。見た目と違って、頑固なんです」
現在、年末まで全国120か所超に及ぶツアーの真っ最中だ。往年のヒット曲から最新曲までを歌い上げる姿には、絶望と喜びを経験した者だけが持つ人生の深みが滲み出る。
「体はすごく疲れますが、お客さんに拍手をいただくとスーッと浄化されて、まるで魔法を掛けられたようになります。『優等生ぶって歌っていた昔と全然違うね』と褒められると嬉しい。残り9か月、今まで支えて下さったファンの方々のために、全身全霊を込めて、目の前にあるコンサートを駆け抜けていく。今はそれしか頭にありません」