GMが2019年の実用化を目指す、ハンドルやペダルのない自動運転車のイメージ(時事通信フォト/GM提供)
ソフトバンクを取材する日経新聞記者・杉本貴司氏の著書『孫正義 300年王国の野望』でも、孫氏の次の言葉が紹介されている。
〈「もしブロードバンドの勝負をやらずに残ったカネをインターネット投資に全部突っ込んでいたら。本当はやっておくべきだったのかもしれないってね。50兆円くらいのリターンは得ていたと思うよ。それが一番悔やんでいることかな」〉
ネット時代の“金の成る木”の所有者になれなかった後悔は、それほどまでに大きかったのだろう。
2007年、グーグルがスマホ向けOSのアンドロイドを公開して携帯電話市場へ進出すると、孫氏は「アジアとケータイを制したものが世界のインターネットを制する」と対抗心をあらわにし、その後はカーナビやGPS事業でもグーグルと鎬を削ってきた。
ソフトバンクの幹部人事でも、孫氏とグーグルの間には因縁があった。2014年、孫氏はグーグルのナンバー2だったニケシュ・アローラ氏を引き抜いた。半年間で165億円の報酬を積み、「後継者候補」として期待を込めた。
「孫さんは後継者の条件として『時価総額を10年で50兆円にする』ことを掲げていた。当時のグーグルは50兆円程度の時価総額だったので、目標額を体現する人間をスカウトしたんです」(嶋氏)
最高幹部を引き抜かれたグーグルにとって痛手だったことは間違いないが、アローラ氏は引き抜きから1年9か月で、あまりにも早くソフトバンク副社長を退任することになった。
そうした中で、孫氏の次なる手は、「トヨタとの提携」だった。昨年10月、自動運転車などの移動サービス事業で提携し、新会社「モネ・テクノロジーズ」を立ち上げることを発表した。孫氏とトヨタの豊田章男社長という“ビッグ2”による握手は世間を驚かせた。