プライム帯はファミリー層と中高年層にターゲットを絞った番組が並び、「割り切っている」という印象がありますが、深夜帯のラインナップは魅力的。そう感じるのは、「攻めの姿勢があるから」だけでなく、「出演タレントの持ち味を最大化しよう」という愛情があるからでしょう。
『川柳居酒屋なつみ』は「功労者である宇賀なつみさんの夢を叶える」というはなむけのような内容であり、『バナナマンのドライブスリー』は車の運転が好きなバナナマンの、『テレビ千鳥』は自由なロケで強みを発揮する千鳥の魅力を引き出そうとしています。
同様に、『霜降りバラエティ』は若くしてM-1王者となった霜降り明星に対する「鉄は熱いうちに打て」というメッセージ的な番組であり、『いまだにファンです!』は過去に人気を集めたタレントへのリスペクトが前提の番組。いずれも、タレントたちが他の番組では見せない生き生きとした姿を引き出しています。
同様に、あえて深夜帯に移動させた『ロンドンハーツ』『陸海空こんなところでヤバイバル』『しくじり先生 俺みたいになるな!!』も、番組を打ち切ろうとせず、「輝きを取り戻そう」という策であり、AbemaTVと連動させるなど、番組にとっても、番組ファンにとっても愛のある時間移動でした。
かつては各局ともに「深夜は攻める」のが当たり前でしたが、コンプライアンスや苦情のリスクが深夜にまで及びはじめた近年は、穏やかな番組が定番化。だからこそテレビ朝日の深夜番組は視聴者の評価が高く、思わずツイートしたくなるものが多いのでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。