鈴木:力士の後援会をやっているヤクザは多かったですよね。ヤクザにとっても、有名な力士と仲が良ければステータスになる。だから後援会をやって、事務所にも手形を掲げたりする。それが暴力団の威光にもつながるわけです。
溝口:力士の側としても、カネはもらえるし、トラブルも処理してもらえる。モンゴルの横綱が大阪のクラブで騒ぎを起こして、山口組系太田興業が仲裁して話を付けたということもありました。
鈴木:ちょっと前までは宴会にも来ていました。俺がよく話していたのは大関で、ヤクザの宴会で俺の知り合いの娘と仲良くカレーを分け合って食べたりしていた。「俺はもともとこういうキャラだから警察に見つかっても何ともないっす」って言っていました(笑い)。
溝口:力士とヤクザは双方にメリットがあったんです。
鈴木:ただ、元大関の琴光喜は野球賭博に嵌まって暴力団関係者から口止め料1億円と脅されてしまった。ヤクザとの関係は一歩踏み外せば命取りになります。
●みぞぐち・あつし/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション賞を受賞。『暴力団』、『山口組三国志 織田絆誠という男』など著書多数。
●すずき・ともひこ/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』など著書多数。近著に『サカナとヤクザ』、『昭和のヤバいヤクザ』。
※週刊ポスト2019年5月3・10日号