しかし、ここには深刻な問題が含まれている。カンチという名前が登場したときには必ずセットになって「日本」が登場するからである。このとき、描かれる日本の姿は「加害者」、つまり、かわいい動物を絶滅させた者として描かれているのだ。例えば、次のような形で。
●子供用の童話
〈「カンチだ! あの島にカンチがいる!」
船に乗っていた日本人漁師たちは手を叩きながら喜びました。
「これで私たちもお金持ちになる」
日本人漁師たちは数十頭のカンチを手荒く捕まえました。
そして、血を流し死んでいくカンチたちを船に積んで暗い水平線の向こうへ消えていきました〉(『ごめんね、独島カンチよ』ユン・ムンヨン著、2017年)
●テレビ
〈数万匹のカンチが生息していた独島。しかし、20世紀半ば以降カンチは完全に絶滅した。現在、カンチは写真、剥製、記録の中でしか見られない。では、数万匹のカンチはなぜ姿を消したのか? カンチ絶滅の最大の理由は、日本人漁師たちの無分別な乱獲である〉(KBS「歴史スペシャル独島カンチの証言──1905年日本の独島侵奪秘史」2011年10月27日)
KBSは日本でいえばNHKのような公共放送で、強力な伝達力を持つ。教育放送のEBSは何度もカンチに関する番組を放送したが、内容はいつも単純で大同小異である。かわいい「カンチ」、そしてそれを絶滅させた「日本」である。
当然の話だが、このような教育とメディアに曝さらされた子供たちと青少年は、日本に対して怒り、憎しみ、反感などの否定的な感情を持つしかない。動物を虐待し、韓国の自然を破壊した「加害者」としての日本が頭の中に定着していくのである。
しかし、このような物語と報道は事実ではない。日本人が日本統治時代の韓国でカンチを捕獲したのは事実だが、彼らの乱獲で絶滅したというのは明らかな虚偽である。なぜならば、終戦後も1970年代までカンチが独島に大量に生息していたという証拠が多数存在するからだ。
次は、終戦(1945年)後、〈鬱陵島の学術調査隊独島踏査 意外! 海狗発見〉というタイトルで韓国メディアに報道された事実である。