そして週1のレギュラー放送をやめた(※注)のが37歳のときです。やめた理由は、「この番組をずっと毎週作っていたら、他のことが一切できない」と思ったからです。実際には『水曜どうでしょう』以外に、具体的にやりたいことがあったわけではありませんが、それでも「何か別のこともやってみたい」という欲求は抑えきれるものではありませんでした。
※注/『水曜どうでしょう』は2002年にレギュラー放送を終えたが、その後も不定期に新作を放送。いまも過去の番組をまとめた計28作のDVDが発売され、総売上枚数は450万枚(2019年1月現在)を超える。
番組を始めて数年経ったころ、ふとこんなことを思いました。「この番組は、たぶん僕ら4人の人生を見せていく番組なんだろう」と。
ジャングルでトラが現れたとき、アラスカでカヌーが流木に激突したとき、北欧で精神状態がおかしくなったとき、番組内でいろんなアクシデントに見舞われたときの、4人それぞれの言動が笑いを誘い、面白さを生むのがこの番組なんだと。そんな番組を見ている人たちはやがて、僕ら4人を昔からの知人のように感じ、知人であれば「その現状が気になり、行く末を気にするのは当然のことだろう」と思ったのです。
番組をやりながら鈴井さんは映画監督に挑戦し、大泉さんはその後俳優として東京に進出し、僕と嬉野さんはサラリーマンとしての働きを変えていきました。『水曜どうでしょう』は、単なる番組の中身ではなく、“僕らの人生そのもの”を見せていくもの。その思いはやがて「一生どうでしょうします」という大泉さんの言葉によって僕ら4人と、そしてファンのみなさんの中で共有されることとなりました。
2013年に放送された「初めてのアフリカ」撮影時の藤やん
『水曜どうでしょう』のレギュラー放送を終えたのち、40代の僕は『水曜どうでしょうDVD全集』を制作しながら、ドラマを作り、『水曜どうでしょう』の新作も作り……。でも、なにより会社にいる時間よりも東京や大阪でいろんな人たちと会って話をする時間が徐々に増えていきました。
それもテレビ関係者だけでなく、カバンや洋服や焼き物や、ジャンルは違えどいろんなモノ作りをしている人たち。そんな人たちとじっくり話をしながらグッズを作ったりする作業は、番組作りに追われていた30代よりもずっと楽しい時間になりました。