溝口:山口組には、後に民主党を選挙応援するに至るまで、政治に影響力を及ぼそうとする系譜がある。
鈴木:しかし今は逆に、政治家を陥れるためにヤクザとの関係が使われますね。2012年に田中慶秋・法務相が、かつて暴力団幹部の息子の仲人を務めていたことが発覚し辞任に追い込まれましたが、ヤクザとの関係が「黒い交際」として問題になるのは本当に最近の話です。政治家とヤクザがパーティーで撮った写真がマスコミで問題になるのが分かってて、政治家との写真を自分でマスコミに売り込むヤクザすらいます。政治家は写真を頼まれたら拒めないし、それを叩くのはさすがに理不尽な気もしますが。
溝口:ヤクザによって命まで絶たれてしまったのが、2007年に長崎市長が山口組系の水心会幹部に射殺された事件です。長崎市が発注する工事に絡めなかった、あるいは自分の運転する車が市の道路工事で事故に遭ったのに補償がなかったとかで恨んでいたという話だった。
鈴木:俺も取材に行きましたが真相は分からなかった。
溝口:しかしながら暴力団の存在は、やはり政治家にとって危険性を孕んでいる。
鈴木:それでも政治家とヤクザとの関係がなくならないのは、票を集める、選挙妨害をする、カネを融通する、情報を集める、口利きをする、トラブルを処理するといった、彼らにしかできない仕事があるからです。
溝口:今後も、政治家とヤクザの関係と、それをめぐるトラブルはなくならないでしょう。
●みぞぐち・あつし/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション賞を受賞。『暴力団』、『山口組三国志 織田絆誠という男』など著書多数。
●すずき・ともひこ/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』など著書多数。近著に『サカナとヤクザ』、『昭和のヤバいヤクザ』。
※週刊ポスト2019年5月17・24日号