「日活での日々、いづみちゃんは、私にとってマリア様のような存在でした。NGを重ねて泣きそうになった時、『泣いちゃだめよ』と、いづみちゃんは私を抱きしめ、優しく励ましてくださいました」
吉永小百合がこう回想する伝説の女優・芦川いづみ(83)がデビュー65周年を迎え、ファンのリクエストに応えたDVDシリーズが日活より発売された。
1950~1960年代の日活黄金期、芦川は清らかで楚々とした古き良き時代の女性の魅力を放ち、多くの男性の心を鷲掴みにした。
スクリーンデビューとなった松竹作品『東京マダムと大阪夫人』(1953年)から間もない1955年に日活へ移籍。石原裕次郎らのアクション映画に多数出演する一方、川島雄三や滝沢英輔、西河克己といった監督らの手掛ける文芸作品で次々に主演を果たす。
が、人気絶頂にさしかかった1968年、『嵐を呼ぶ男』で共演した俳優・藤竜也と結婚。惜しまれながら引退した。その後、映画のみならず、テレビや雑誌などのメディアには一切出演していない。
15年というわずかな活動期間を駆け抜けた可憐なヒロインは、こうして今なお人々に語り継がれる伝説的な存在となったのだ。“憧れの女”は映画の中で永遠に輝き続ける。