そこには自宅の団地を中心に何やら線が数本引かれ、
「この範囲内にある物件でお願いしますね。吉方だから」
そう母が言うと、父は恥ずかしそうに頭を抱えた。
「ご主人、大丈夫ですよ。風水で物件を決めるかたはたくさんおられますから」と、不動産店の担当者は大まじめにフォローする。「そうでしょ? 普通よ」と母。
思い返せば母はいろいろな占いにハマってきたが、どれもちゃっかり受け入れてきた。
「新宿の母」を訪ねたのは、母がちょうど今の私と同年代のころ。“家族に恵まれて”と言われたらしいが、当時はよく父への不満を愚痴っていたのだ。それが30年余りを経て、認知症も少々加わって、
「パパは働き者で最高の夫だったし、NちゃんもSちゃん(私の娘)も犬のももちゃんもみんないい子。やっぱり“新宿の母”はすごい! バッチリ当たっているもの!」と、なった。どう見ても、母自ら当たりに行っている感じだ。
そんな母を見習って、よい占いの結果は、私も素直に信じてみようと思っている。
※女性セブン2019年6月6日号