その背景には、「イスラム世界のハレム(後宮)には裸体の美女がたむろしている」といったヨーロッパ人の先入観をあくまで守ろうとする意識が透けて見える。当時のヨーロッパ人は、学術的な興味からではなく、「聖書の世界が現実のものであったと実証するため」に中東地域の遺跡発掘に力を入れるなどしていた。『アラビアンナイト』が成立する過程には、イスラム世界の領土や資源を支配する「植民地主義」まっしぐらであった時代のヨーロッパ人の“傲慢さ”がよく表われている。
【プロフィール】しまざき・すすむ/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。著書に『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『春秋戦国の英傑たち』(双葉社)、『仕事に効く! 繰り返す世界史』(総合法令出版)、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』(辰巳出版)、『いっきに読める史記』(PHPエディターズ・グループ)など多数。