ブログには、2人の弟が手伝いに来る様子が書かれていることもあるが、そこに「妹」が登場することはない。
◆きょうだい間で頻出 介護の分担トラブル
内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によれば、要介護者と同居している主な介護者のうち60才以上は、男性は70.1%、女性が69.9%。これは、老老介護がいかに多いかという現実を物語っている。
さらには、要介護者の高年齢化に伴って、「高齢の子供が高齢の親を介護する」という、“親子間の老老介護”によって共倒れするケースも続出。
ならば、きょうだいがいれば親の介護負担を分け合えると思いきや、その存在がかえってトラブルのもとになることもある。
親が元気なうちから介護体制を決めるなど、助け合えればよいのだが、それは稀なケースだ。たいていは親の近くに住んでいる人、離婚や未婚などによって家に残っている人がなし崩し的に介護を背負う傾向がある。
金銭面のトラブルも無視できない。親に財産がなければ、介護にかかる費用をきょうだいのうち誰が負担するのかという問題もある。親の介護のために仕事を辞め、生活に困窮する“介護破産”も社会問題化している。
介護によって人生を奪われる──そのしわ寄せをきょうだい皆が等しく食うならまだしも、誰かひとりだけ背負うとなれば、きょうだい仲の悪化につながるのも無理はない。
しかし、桃井家の場合は、事情が異なるようだ。
「章さんもお母さんもかおりさんのライフスタイルを尊重しています。現在の介護生活に入る前に、きょうだいで相当話し合ったそうです。介護する側が疲れてしまわないよう、これまでの生活を極力変えないようにしたいと。そのなかで、できる限りのことをしていこうと決めたようです」(前出・桃井家の知人)
母の介護ときょうだいの関与について、章さんに聞いた。
「母と暮らすようになったのは今から5年前。母が犬の散歩中に転び、大腿骨を骨折したことがきっかけです。2人の弟は施設に入れることを望みましたが、ぼくと妹は自宅がいいと思っていた。施設に入ると途端に認知症を発症すると聞くし、母は人づきあいが好きな方じゃないので。
それで妹から、“所有するビルの部屋を空けるから、母と一緒に住んでくれ”って提案されて。実はぼくが経営していたバーが潰れて妻にも逃げられて、お金もなかったから、時期がよかった(笑い)。母は90代にして、認知症でもないし、大腿骨骨折後にひとりで歩けるまでに回復したので、結果よかったと思います」
──弟たちとは揉めた?
「施設に入れるかどうかで議論になりましたが、今は理解してくれています。次男は医学博士で母の健康を見てくれているし、三男は後見人でお金の管理をしています」
──かおりさんとの関係は?
「20年近く前に、ひょんなことでけんかになり、絶縁状態でしたが、妹が“もう一回きょうだいしようよ”って言ってくれて、今では普通の関係です。妹は母のことを気にして頻繁に帰国してくれるし、ぼくが毎日のように母のことをブログで書くのは、妹への“報告”という意味もある。きょうだいそれぞれが、できる形で母を支えています」
そう話す章さんは、最後に笑顔でこう付け加えた。
「自分たちがやっていてなんですが、母みたいな老後はいいなって思いますよ」
※女性セブン2019年6月20日号