ライフ

元・地検特捜部長が赤裸々に語る深い闇【岩瀬達哉氏書評】

『特捜は「巨悪」を捕らえたか 地検特捜部長の極秘メモ』/宗像紀夫・著

【書評】『特捜は「巨悪」を捕らえたか 地検特捜部長の極秘メモ』/宗像紀夫・著/ワック株式会社/1500円+税
【評者】岩瀬達哉(ノンフィクション作家)

 ロッキード事件、リクルート事件など戦後を代表する疑獄事件を捜査してきた元東京地検特捜部長の回想録。事件を掘り起こす独自の捜査手法や、国家権力の暴走を監視しなければならないプレッシャー、さらには決定的供述を引き出した容疑者に自殺された悔恨とトラウマまで、驚くほど赤裸々に綴っている。なぜなのか──。

 私は一度だけ、現役時代の著者を取材で訪ねたことがある。広い検事正室で、質問には何も答えずじっと私を見ながら、ようやく開いた重い口から出たのは、ひとつの忠告だった。「(君の身を守るため)そのことは書くな。書いたら名誉棄損で訴えられ負ける。ぜったい、書くなよ」。

 リクルート事件で取り調べを受けた江副浩正氏も、「洒落たユーモアを言う人で、フランクで誠実、人柄がとてもいい」と評している。厳しい取り調べにあっても、憎めない人の好さを感じたのだろう。

 検事は供述を引き出すことで事件を解決する一方、落ちてしまった容疑者には、逃げ切ろうとする巨悪や所属する組織などからの厳しい責めが待っている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

12月9日に亡くなった小倉智昭さん
【仕事こそ人生でも最後は妻と…】小倉智昭さん、40年以上連れ添った夫婦の“心地よい距離感” 約1年前から別居も“夫婦のしあわせな日々”が再スタートしていた
女性セブン
去就が注目される甲斐拓也(時事通信フォト)
FA宣言した甲斐拓也に辛口評価 レジェンド・江本孟紀氏が首を傾げた「なんでキャッチャーはみんな同じフォームなのか」
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
NBAレイカーズの試合観戦に訪れた大谷翔平と真美子さん(AFP=時事)
《真美子夫人との誕生日デートが話題》大谷翔平が夫婦まるごと高い好感度を維持できるワケ「腕時計は8万円SEIKO」「誕生日プレゼントは実用性重視」  
NEWSポストセブン
元夫の親友と授かり再婚をした古閑美保(時事通信フォト)
女子ゴルフ・古閑美保が“元夫の親友”と授かり再婚 過去の路上ハグで“略奪愛”疑惑浮上するもきっぱり否定、けじめをつけた上で交際に発展
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン