ダグラス・グラマン事件では、日商岩井の常務から、「アメリカでの裏ガネづくりのシステム、使っていたアメリカの銀行口座の名義、それを引き出して日本に運んでくるのは誰が担っていたのか、そして誰にカネを配っていたのか」を詳細に語らせた。しかしその日の夜、この常務は上司の副社長らと食事したのち、「十通の遺書」を残して自殺した。一通の遺書には「宗像検事殿、行くのをお許し下さい」とあったという。
権力犯罪の深い闇は、特捜検察の力をもってしても容易に解明できない。それだけに「隠れた『巨悪』を見つけ出して、これを摘発」するには、「何をやってもいいという風潮が蔓延」しがちとなる。その挙句、「無理な取り調べや証拠ねつ造など」で、厚労省の局長を犯人に仕立て上げる「村木事件」が引き起こされた。成果主義に走り、正義を見失いがちな検察への戒めでもある。
※週刊ポスト2019年6月21日号