西田、そして「スーさん」役の三國連太郎は本番でアドリブを仕掛けてくることで知られる俳優たちである。
「そういうのは平気ですね。『時間ですよ』と『寺貫』でコロコロと芝居が変わるのは慣れているので。急に何か言われても『えっ!』という止め方はしないで済みました。その役でいたら、その役の反応でかわしちゃえばいい──という感じでしたから。
三國さんと西田さんですから、台本通りには絶対にいかないわけです。それがダメな人はダメなんですけど、私はデビューして最初がそれだったので」
その後もテレビドラマなどに数多く出演。主婦役など、日常的な役どころを得意とする。
「たしかに、普通のお母さんとか明るいお母さんとか、そういう役が多かったですね。私、日常的な役って好きなんですよ。
友だちとかを見ていると、主婦ほどいろんな人がいるから面白いんですよ。お金持ちの奥さんもいれば、そうじゃない人もいる。三人も男の子がいて、もう髪を振り乱して子育てしている人もいれば優雅な人もいる。ついひと言で『主婦みたいな人』『奥さんみたいな人』ってなっちゃうんですけど、『あ、こういうものなんだ』という発見が人を見ているとあるものなんです。
『この人はB型で短大出なんだろう』とか、本に載ってないその役のプロフィールを自分で勝手に考えて決めていくこともありますよ」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。
■撮影:藤岡雅樹
※週刊ポスト2019年6月21日号