梅雨シーズン本番を迎え、各地で雨災害への警戒が叫ばれるなか、「東京23区」に重大な危険性を示すデータが浮かび上がってきた。これまで各自治体が公表してきたハザードマップを見ているだけではわからない「都心ならではの弱点」があったのだ。
◆1m超えが11か所も
仕事の帰り道、ターミナル駅前の交差点付近でにわか雨に遭ったため、濡れながら電車に乗るのは嫌だなと近くのビルに飛び込んだ。ところが、雨はなかなか降り止まず、交差点は浸水しきってしまい、渡ることすらできない。まさかこんなことになるなんて──。
その“まさか”が正確に予測できるようになるかもしれない画期的なシミュレーションシステムを、早稲田大や東京大学などの合同研究グループが開発した。豪雨発生時の東京23区内の浸水被害を、20分先までリアルタイムに予測するというもので、研究チームはこのために23区内のあらゆる都市インフラをデータベース化したという。
具体的には、雨水が最初に降り注ぐ道路のほか、降った雨水の通り道である下水道や貯水施設、河川に流すポンプ場から、土地の利用状況を表わす建物の建ぺい率・容積率などまで現実に即して再現。そこに降雨データを入力し、排水能力を超える降雨による浸水被害を予測するのだ。
7月上旬から試験運用が始まり、2020年夏の東京五輪開催に合わせて本格運用を予定しているという。
今回の研究を主導した早稲田大学理工学術院教授・関根正人氏が都内で過去最大雨量を記録した2005年9月の杉並豪雨を想定し、「23区で1時間あたり50mm超の雨が約2時間半降り続いたらどうなるか」をシステムに入力し、計算した結果を地図で示した。