5年も受給を我慢して約15%しか増えないのだ。これが在老の廃止で、働きながら繰り下げても42%増の恩恵をまるまる受けられるようになる(ケース【7】)。
このように、在職老齢年金の廃止は60歳以降の働き方の常識を変え、「老後資産」の形成に大きなインパクトを与える。だが、それに備えるには第2の人生のライフプランそのものの見直しと十分な準備期間が必要だ。
たとえば、定年後の雇用延長期間に時短勤務で働いている人が、在老廃止直前になって慌てて「年金を減らされないなら、これからはフルタイムで働かせてくれ」と会社に申し入れても、すぐ働き方の変更を認めてもらえるとは限らない。
ましてや、年金カット廃止を機に、給料と年金のダブル受給で老後資産を大きく増やそうと思うのであれば、現役時代に近い給料水準を維持しなければならない。そのためには、50代後半から定年後の雇用延長や再就職に備えてスキルを高めておくことも重要だ。
在老が廃止されるのはまだ2~3年先だと考えられるが、その準備は今から始めないと間に合わない。
※週刊ポスト2019年6月28日号