他にもタピオカ由来のでん粉はさまざま使われているな場面で。粘度の高い団子のたれやジャム、カスタードクリームなどの増粘剤に。また揚げ物では、サクサクした食感になりやすいと、タピオカ由来の酸化でん粉が利用されている。
タピオカは、バブル以降にその名前が浸透した印象もあるが、実は古くから安価で質のいい加工でん粉として使われてきた。1873(明治6)年に、杉田玄白の曾孫であり、勝海舟の主治医でもあった杉田玄端が翻訳した「幼童手引草」にも「米「『ライス』とは」という問いの並びに「タピオカとは何物なりや」というQ&Aが載っているし、1927(昭和2)年には大蔵省が「内地でん粉業の保護」のため、安価だったタピオカ粉の関税率を1円から1円80銭へと引き上げている。
現在、世界的にもタピオカでん粉の消費量は急激に伸びており、2019年の消費量も対前年比4%増、とりわけアジアは昨年に引き続き、4.4%の伸び率と世界の市場を牽引する地域となっている。タピオカでん粉価格は2017年9月に1トン当たり345ドル(3万9675円)だったものが、2018年6月には同500ドル(5万7500円)と大幅に高騰。特に中国におけるでん粉需要が高いという。
昨今、食材において日本の「買い負け」を耳にすることが増えてきた。いまのところ高級食材が中心だが、日本では大衆食における客単価は低く、いきおい食材原価も抑えられる傾向が強い。海外からグルメを目的として来日する旅行客は多いが、話を聞くと外食費の安さを理由に挙げる人も少なくない。
原材料費の安いタピオカはコスト面においても参入障壁が低い。それゆえ参入ペースが加速し、ブームにつながっている側面もある。渋谷、原宿、青山……。数年先の若者の町の風景は、もしかすると食材の原料コストで変わっていくのかもしれない。