これは以前、作家の家田荘子さんに教えていただいたんですけど、「この人には、いいところがたくさんあるから一緒にいよう」と考えるのは、その後、うまくいかないことが多いんですって。
逆に、白紙の状態からスタートすれば、「いいところ」を見つけるたびに、「なんていい人なの!」とプラス評価が増えていきます。目の前の事実は変わっていませんが、見方ひとつで、人は幸せにも不幸にも生きられるものなんです。
「理想の未来図」をしっかりと描き込んでしまうと、そうならなかった時に、その出来事がすべてマイナスになってしまいます。「幸せ」が目の前にあっても、「自分の理想と違う」と避けてしまう人も多いんじゃないかしら?
「上を見ない」ということではありません。「自分に都合のいい未来」を期待しない、ということです。理想で自分を縛ってしまうよりは、未来を白紙にすることで、ずっと自由でありたい。
とはいえ、私自身、「人生の理想」は描いていませんが、「人生の目標」はきちんと持ち続けています。それは「健康で歌を歌い続ける」ということ。簡単なように思われるかもしれませんが、これって実はすごい大それた目標だと思っています。
ちなみにデビュー以来55年間、病気で休んだことがないことが、私の密かな誇りです。いくら健康に注意していても、突然病気になることだってある。突然、声が出なくなった歌手を、私は何人も見てきました。
もし私の声が出なくなったら? その時は、歌手を引退する時です。未来は「白紙」だから、その時が来ても、そのことを「不幸」とは思わないでしょう。そんなことを考えるよりは、いつ終わりが来てもいいように、これからも私は、その日、その日を、一生懸命に生きていきたいと思います。
※小林幸子・著『ラスボスの伝言~小林幸子の「幸」を招く20のルール』より抜粋