ライフ

井上円了から水木しげる、京極夏彦まで…妖怪研究の150年

「青鬼」(「百鬼夜行絵巻」より)

 今年4月にオープンした公立博物館としては世界初の“妖怪”博物館とされる広島・三次市の「湯本豪一記念日本妖怪博物館」(三次もののけミュージアム)が、年間目標来館者10万人に対して開館からわずか2か月で5万人を記録。他にもこの夏各地で“妖怪”展覧会が開催予定と、世はまさに妖怪ブームだ。

 日本の伝統文化と“もののけ”たちは、どのように関わってきたのか? 平成最後の御進講を務めた小松和彦・国際日本文化研究センター所長が語る

 * * *
「妖怪」という言葉の起源は、それほど古くはありません。明治の半ば頃に哲学者の井上円了が立ち上げた「妖怪学」が定着していったものです。それまで妖怪は、化け物や鬼といった言葉で表現されていました。

 人々が生活する中で出会う怪異、例えば、聞こえるはずのない場所からする不審な音などの「現象」を、妖怪という「存在」に置き換えたもの、というのが妖怪の定義の一つです。

 彼らの存在は平安時代の説話集『今昔物語集』にみられ、やがて絵巻物に描かれていきます。木版技術の発展した江戸時代には、大量の妖怪画が出回り、娯楽として大衆に親しまれていました。

 妖怪を初めて学問として研究したのが井上円了であり、彼の研究は妖怪を合理的に解明しようとするもので、いわば妖怪を撲滅するものでもありました。文明開化の時代なので、大衆に残る迷信めいたものから解放されなければ、新時代を生きられないとの思いがあったはずです。井上に触発されて続いたのが民俗学の柳田国男らでしたが、戦争や西洋科学への傾倒の影響などもあり、妖怪研究はしばらく低迷することになります。

関連キーワード

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン