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佐々木朗希登板回避で監督を批判するのは「弱い者いじめ」だ

花巻東に敗れ、涙をこらえる大船渡の佐々木朗希投手(左から2人目=時事通信フォト)

 ネットは怒りを増幅させる装置として決定的な役割を担うことがままある。ニュースについたコメント欄や当該人物のSNSが批難の嵐になることはもはや珍しくない。かといって怒ってばかりいるのはどうか。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 ダメなおっさんの特徴であり得意技なのが、自分より立場が弱い相手や反撃できないことがわかっている相手に対して、無駄に威張ったり攻撃したりすることです。下請けや出入り業者にふんぞり返った態度しか取れないおっさんしかり、電車が遅れたことで駅員を怒鳴りつけているおっさんしかり。ああ、なんて恥ずかしいのでしょう。

 雨上がり決死隊の宮迫博之とロンドンブーツ1号2号の田村亮が記者会見を開いたのは、7月20日のことでした。22日には吉本興業の岡本昭彦社長も会見を実施。どちらもそれぞれにインパクト抜群だったし、同社に所属する大物芸人たちも次々に意見を表明します。そんなこんなで、世間の関心やら非難やらが一気に吉本興業に集まりました。

 あれからだいたい一週間、世間はそろそろ吉本の話題に飽き始めています。多少の改革はあるかもしれませんけど、本質的にはきっと何も変わらないでしょう。ネットに渦巻いていた膨大な怒りの声は、単なるエネルギーの無駄遣いだったことになります。したり顔の論評も、世の中を変える力になったわけではありません。

 似た話として思い出されるのが、1年ちょっと前に大いに盛り上がった「日大アメフト部の危険タックル問題」。当時は「永遠に許すまじ!」の勢いで怒っていた世間のみなさんですが、今はすっかりあの問題のことなんて忘れています。「日大の志願者が大きく減るに違いない」と言われていましたが、そういう話も寡聞にして聞きません、。

 ヒマとエネルギーとルサンチマンを持て余しているダメなおっさんたち(年齢や性別を問わず)にとって、25日以降かっこうのネタになっているのが、岩手県大会決勝での「大船渡・佐々木朗希投手登板回避問題」。163キロの剛速球を投げる絶対的エースが、花巻東との決勝戦に登板せず、大船渡は大差で敗れて甲子園出場を逃します。試合後、国保陽平監督は、佐々木を登板させなかった理由を「故障を防ぐため」と説明しました。

 この判断に対して、野球関係者などが賛否両論さまざまな意見を示しています。ネット上でも、監督に対する非難の声や、監督を非難する人に対する非難の声などが錯綜。たくさんの怒りのエネルギーが浪費されています。この暑いのにお疲れさまです。

 高校野球という“特殊な世界”の出来事だから大きな話題になっていますが、そもそもは高校生の部活動であり、縁もゆかりもない外野の野次馬が大騒ぎするようなことではありません。「総合的に考えて監督がそう判断した」というだけの話です。判断に至るまでには、表に出ている話も出ていない話もあるでしょう。

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