ライフ

認知症の母 「毎日が日曜日」でもラクではない暮らし

認知症母は3度の食事時間以外はすべて自分の時間(写真/アフロ)

 父が急死したことで、認知症の母(84才)を支えるっ立場となった女性セブンのN記者(55才・女性)が、介護の日々を綴る。果たして「毎日が日曜日」は幸せなのか。

 * * *
 家事や仕事に追われる更年期まっただ中の私から見れば、母の悠々自適な生活はうらやましい限りだ。いつでも誰にも気兼ねなく、居眠りしていい気楽さ。とはいえ、緩みすぎれば体調を崩すので、そうのんきに構えてもいられない。隠居生活にも体力と気力が必要だ。

◆締め切りのない生活が羨ましすぎる!

 6年前に父が亡くなり、5年前に思い切って転居し、今はサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)にひとりで暮らす母の生活は、娘の私が言うのもなんだが、悠々自適の典型と評していい。

 昭和50年代、そういえば父や母も憧れをもってよく口にしていた流行語「毎日が日曜日」。今、まさに母はそこにいる。

 家族で暮らした家では、認知症の母が“できないこと”が増える一方だったが、現在の小さな居室は5分もあれば片づき、食事は住宅内の食堂に頼んでいるので買い物や料理もしなくてすむ。足りないところはヘルパーさんが笑顔でフォローしてくれて、母が“できること”ばかりの生活になった。すると、自分の記憶障害も笑い飛ばせるほど落ち着きを取り戻した。人によっては慣れ親しんだ自宅の生活が何より大事ということもあるが、母は違ったのだ。

 3度の食事時間以外はすべて自分の時間。自室のお風呂には好きな時間に入れるし、夜遅くまで好きな読書に耽ってもOK。週3回、若いイケメンの送迎付きのデイケアに通うのも楽しそうだ。

「楽しいよ。ご飯もおいしいし、今まででいちばん幸せ」と、母は何度も言う。そしていつ電話をしても必ず最初に「今、帰ってきたところよ。毎日忙しくて、ボケてるヒマがないわ」と笑う。この大げさな喜びようは、ボケが半分、転居に奔走した私への労い半分といったところだろう。

 でも上機嫌の母を見ていると時々妙な気持ちが湧くのだ。「今やらねばならない家事」や「締め切り」がない生活…。正直、うらやましい。ゴロッと寝転んで「今日は何しようかな~」というのはどんな気分だろう。更年期の疲れた頭で、ついボンヤリと考えてしまう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン