なかでも、夏休みに水鉄砲を使って行われる「ウオーターバトル」は、他校からも熱視線を集めるほど大盛況だ。
杉山さんがこだわったのは「なぜ、PTAでそれをやるのか」という原点だ。
「PTAでやる意味をきちんと説明できないものは省きました。たとえばリサイクル運動。『そういった学びも必要では』という反論もありましたが、なんでも学校を巻き込むのではなく、家庭でできることもあります。
しかし、前会長から、『前任たちががんばってきたことを、何もかも否定すればいいというものではない』と注意も受けました。たとえば夏休みのラジオ体操は、共働きの家庭が早朝に子供を送り出す負担は大きいのですが、『地域とのつながり』という、非常に大事な役割がある。なくすことにも意味がありますが、続けることにも理由があったと気づきました」(杉山さん)
“PTAはおもしろくない”という固定観念を覆すため、新たな試みに積極的に取り組む杉山さんだが、決して強制はせず「おもしろいと思わなければ参加しなくて大丈夫ですよ」と保護者たちに伝えている。
◆自分の教育が最善ではないことを知れる
八王子市立第十小学校(東京)前PTA会長で、八王子市立小学校PTA連合会会長の櫻井励造さん(43才)も、杉山さんの意見に同意する。
「うちの学校でもPTA主催の行事は毎年ありましたが、どうせならもっと自分たちが主体となって作り上げるイベントの方が楽しいだろうと思い、他校を参考にしながら『学校に泊まろう』というイベントを行いました。
災害時を想定して子供たちが体育館に泊まるイベントで、慎重派のお母さんたちには反対されましたが、企画書を作って丁寧に説明したら、『おもしろそうだから一回やってみましょう』と前向きになってもらえた。子供たちは学校に泊まれるというだけで大喜びしていましたね」
同校の現PTA会長の天野耕太さん(40才)は、多様化する家庭に寄り添うPTAを目指す。
「今の小学1年生の親は半分以上が共働きです。保護者同士の年の差も昔よりはるかに幅広く、外国人の親も増えています。『子供が同じ学校に通っている』という共通点があるだけで、これほど多種多様な人が集まるコミュニティーはほかにありません。PTAで感じたり身につけたことは、会社の仕事にも生かされるようになりました」(天野さん)
『ある日うっかりPTA』(KADOKAWA)の著者の杉江松恋さんは、PTA活動を通じて、親としての変化を自覚したという。