次も恋愛映画。『COLD WAR あの歌、2つの心』は、71回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した作品。監督は『イーダ』のパヴェウ・パヴリコフスキだ。
舞台は、冷戦下のポーランド。ピアニストのヴィクトルは、音楽舞踊団の養成所で、歌手を夢見るズーラと出会う。2人は魅かれ合い、すれ違ってもなお求め合わずにいられない。
88分と短い映画だが、説明を極限までそぎ落とし、壮大な物語を描くことに成功している。白黒の映像も、かえって鮮やかに見えるから不思議だ。
なんといっても音楽がすごい。クラシックや民族音楽、ジャズ、ロック……。過酷な時代において、生きること、歌うこと、愛することのエネルギーにあふれたズーラの心と、音楽が呼応する。
映画を観終わった後、「2つの心」という悲恋の歌がしばらく耳から離れない。特に、この歌のジャズバージョンにはしびれる。すべては消え去っても、愛だけが歴史や世界を超えると思わせてくれるような歌声だ。ズーラを演じる女優ヨアンナ・クーリクがとてもすばらしい。