こうして賛成派、反対派の言い分を細かく聞くと、それぞれに一理あるように思う。子連れ出勤を推奨した少子化対策担当大臣の発言が賛否両論を巻き起こしたのも、当然のことだ。
もっとも、共働き家庭の子育て支援を考える時、“子連れ出勤”は万能な解決策とは言い難く、やはり自治体が十分な保育施設を整えることが望ましいのは間違いない。また、「子育ては母親が行うもの」という暗黙の前提を取り除き、夫との子育てシェアのあり方を見直す必要もある。祖父母との同居など、家族体制についても考える余地がありそうだ。
しかし、それはそれ。いま子どもを預けられず働くことができていない人に対して、企業ができる取組みにも改善余地はあるはずだ。前出調査のフリーコメントにも「もし子連れ出勤を認めるのであれば、企業内に保育施設を設置して欲しい」という声が多く見られた。
確かに、社内にしっかりとした保育スペースがあり、子どもの面倒を見てくれる人がいるならば、親としては安心して預けることができる。保育スペースが仕事スペースと隔離されていれば、同僚に迷惑がかかることもなさそうだ。
しかしながら、企業内保育施設の導入はあまり進んでいない。東京商工リサーチが2019年2~3月に行った調査によると、事業所内保育所を設置している企業は、わずか1.6%にとどまる。
政府は子連れ出勤を支援する立場を示しており、企業が設置する保育施設の整備費や運営費を助成する制度もある。しかし残念なことに、助成金を巡っては経営コンサルティング会社の代表が、企業主導型保育事業に対する国の助成金計約2億円を搾取した容疑で逮捕される事件が起きてしまった。