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「子連れ出勤」に賛否 なぜ企業内保育所は増えないのか

 企業内保育施設の導入が進まない理由はいくつも考えられるが、その中でも特に3点挙げておきたい。

 1つは、通勤である。子どもを連れて通勤ラッシュの電車に乗るのは怖い。子どもの安全を考えると、親だけでなく会社としても躊躇してしまう。

 2つ目は、保育士の確保だ。日本中で不足が問題視されている保育士をどう確保するかは、企業内保育施設の運営においても同様の難題である。

 3つ目に、費用対効果の問題がある。助成金があったとしても、保育施設の設置や人員確保のコストは負担だ。一方で利用する社員の数には波があり、ゼロになる年さえあり得る。

 このように企業内保育施設を設置するハードルも高いのである。他社との共同設置という方法もあるが、仮に設置できたとしても、運営し続けるハードルもまた高い。

 子育て支援策には、企業内保育施設の設置以外にも有効だと考えられる取り組みがある。こちらも代表的なものを3点挙げてみたい。

 1つは、時差出勤の推奨だ。ラッシュ時間を避けられるのであれば、子連れでも通勤しやすくなる。そのうえで企業内保育施設を設置すれば、子育て層の利用意欲は高まりそうだ。

 2つ目は、在宅勤務制度の導入である。職場に通う必要がなくなれば、同僚に気兼ねすることもなく、子連れ出勤の場合に生じてしまう懸念材料の多くは払拭される。

 3つ目は、ベビーシッターの補助。毎日、全額を補助するとなると企業にとってかなりのコスト負担になってしまうが、緊急時に利用補助が出るだけでも助かるケースはある。

 大切なポイントは、上記のような施策を複数同時並行で走らせることで組み合わせの効果が生まれ、活用しやすくなることだ。逆に言えば、どれか1つの施策を単発で実施しても、期待通りの効果は得られない可能性がある。

 時差出勤が可能になれば、ラッシュ時間を避けて子連れ出勤できるようになることは先に述べた。他にも、基本は在宅勤務にしながら、出社するタイミングだけ子連れ出勤したり、会社が子連れ出勤を認めていない場合は、その時だけベビーシッターを依頼して会社からは金銭補助してもらう──という組み合わせなども有効だろう。

 各自治体に保育施設の設置を求めていくことはもちろん必要だが、自治体側の設置をただ待つだけでなく、企業側も同時並行で対策を取っていけば、働く側の選択肢はグンと拡がる。どんな選択肢を用意するかは、置かれた環境と照らし合わせて企業ごとに判断する必要があるだろう。

 もし、子育て層を戦力の中心とする企業であれば、子連れ出勤を認め、時差出勤や車通勤などと組み合わせて企業内保育施設運営に投資することがベストの解決策になるかもしれない。

 企業にできることを考え実現していくたびに選択肢は増え、社会はより働きやすくなっていく。その努力が生み出す恩恵は、働く人のみならず、採用力の向上という形で企業にももたらされるはずである。

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