そのような中、リゾートホテルをはじめ都市型ホテルでも特徴的な動きが出てきた。
ファミリー層から絶大な支持のある「ルネッサンス リゾート オキナワ」では、2019年10月から2020年5月までの間、客室、ロビー、ブッフェレストランの改修工事を行う。中でも客室は全377室のうち354室に手を入れる開業以来の大改装となり、11月から2月までは全館休業。より非日常感とリゾート感を追求する差別化により、三世代、多彩なゲストに支持される質の高いハードを目指すという。
沖縄ならではのリゾートが本来持つ非日常感やラグジュアリー感を前面に出し、ターゲットを絞るホテルも存在感を放つ。7月20日に読谷村へ開業した「グランディスタイル 沖縄 読谷 ホテル&リゾート」は“大人限定のラグジュアリーリゾート”を謳う。「沖縄を美しくしなやかに遊ぶ」をテーマにゲストは16歳以上限定だ。併設されたインフィニティプールと“4つの食”を満喫できるレストラン&BARが大人のリゾートといった雰囲気を醸し出す。
客室は約50平方メートル~79平方メートルで全室ツイン仕様。全54室というきめ細やかなサービスを意識した規模で、余裕あるライフスタイルの大人をターゲットにする。リゾートホテルといえば、ビーチサイドに圧巻のハードを売りにするホテルも多いが、少し奥まった立地にして、自然の風がホテルを抜けるような繊細でいてナチュラルな雰囲気に包まれているのは、沖縄リゾートホテルの新たなアンチテーゼといえるかもしれない。
大人のリゾートを謳う「グランディスタイル沖縄読谷ホテル&リゾート」
一方、那覇の都市型ホテルでも新たな動きが起きている。1975年の開業で、皇室をはじめ地元の政財界に利用されてきたことでも知られる「沖縄ハーバービューホテル」が「ANAクラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー」からリブランド、当初の名称である“ハーバービューホテル”へ戻った。
特徴的なのは、新たなホテルのコーポレートイメージともいえるロゴに開業当初のものを採用したことだ。そもそもは米軍の将校クラブがあった場所の跡地に作られたホテル。歴史、伝統、格式というワードで往時を知る人々の間では“お帰りなさい”ムードが満ちている。
リブランドで開業当初のロゴを復活させた「沖縄ハーバービューホテル」
40年余年の間にはリニューアルされたこともあったが、いまとなっては古い外観にして館内も旧さも否めず、肝心の“ハーバー”は一部からしか望めなくなった。とはいえ開業当時のロゴへ戻ったことを歓迎する声は強い。総支配人に就任した齊川慶一氏は1981年に沖縄全日空リゾートへ入社してから、主に沖縄ホテル業界をみつめてきた人物だ。
「沖縄を取り巻く環境が急激に変化し続ける中にあって、伝統と格式を誇るホテルとして地元のゲストはもちろん、多様化するお客様のニーズにもしっかり対応できるホテルにイノベーションを図っていく」(齊川氏)
実はこのリブランドに際しては、当然のことながら宿泊予約システムの変更や、レストラン・宴会予約システムの更新に加え、ロゴをはじめとするブランドの刷新など幾多の困難を乗り越えなければならなかった。齊川氏自身陣頭指揮を執りながら運営本部スタッフの支援活動を推進、現地スタッフ協力のもと3か月で成し遂げことは奇跡的と話題になっている。人材不足に喘ぐ沖縄ホテル業界にあって、齊川氏が長年築いてきた人脈や信頼がなせる技だったのだろう。
“足りないから作る”を繰り返してきたホテル業界であるが、装置産業であり投資を続けなければならないのもまた宿命だ。果たして沖縄のホテルは、質の高い人材確保やゲスト思いの独自価値を打ち出し続けることができるか。