◆「第2の創業」で後継者にバトン渡すのか
「尋常でない変化が起きた」──。今年1月、永守会長は“米中貿易戦争”に伴う中国の景気の変調に警鐘を鳴らした。
こうした最中、日本電産社内に慎重論がある中で、中国自動車大手、広州汽車集団の子会社と電気自動車(EV)駆動用のトラクションモーターを開発・生産・販売する合弁会社を設立する。今年4月、オムロンの車載事業を約1000億円で買収すると発表したが、自社の駆動用モーターとオムロンの制御システムを組み合せ、中国の新興自動車メーカーも含め幅広い企業にモジュール部品を納入するという。
中国景気が低迷するなか、あくまで強気の業績見通しは変えない。
モーターを含めた車載関連事業の売り上げは2019年3月期の2972億円から2021年同期までに6000億円に倍増する目標を掲げる。2020年3月期の売上高は12%増の1兆6500億円、純利益は22%増の1350億円を見込む。オムロンの車載事業買収に伴うシナジー効果が期待できるからだ。M&Aで失った売り上げ(セコップ分)はM&A(オムロン分)で取り戻すというわけだ。
車、ロボット、省エネ家電、ドローンの4つの技術トレンドを核に、売上高を2021年3月期に2兆円、31年同期に30兆円とする遠大な計画も秘めている。
永守氏は8月28日で75歳になる。日本電産の社名をブランド名である「Nidec(ニデック)」に変更する意向も示しているが、第2の創業に当たる社名変更を機に後継者にバトンタッチするのだろうか──。
いや、それはないだろう。永守重信氏は終身最高経営責任者(CEO)であり続けるのではないのか。もしかすると「共同社長」ではなく、永守氏が社長に復帰することだってあると思う。
●文/有森隆(ジャーナリスト)