◆カリスマ経営から合議制に移行
2018年6月20日に開いた株主総会で永守重信会長兼社長は会長兼最高経営責任者(CEO)に就き、吉本浩之副社長が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格した。強烈なリーダーシップを発揮して日本電産をグローバル企業に育て上げた創業者は、終身社長と見られていたから、社長交代はサプライズだった。
永守氏は2018年3月、京都学園大学を運営する学校法人京都学園の理事長に就任した。大学名を京都先端科学大学に変更。100億円を超える私財を投じ、工学部電気機械システム工学科を新設。日本初のモーターエンジニア育成コースを設けた。
永守氏は大学経営にシフトしながら会長としては買収戦略など経営の中枢を担い、一部の業務を吉本社長に任せる考えだった。吉本氏はプロパー社員ではない。日産自動車などを経て2015年3月日本電産に移った。
「経営力を見るには、ダメな会社を再生させてみたら分かる」
永守会長の人材登用の要諦だ。吉本氏は日本電産トーソクの社長を務めた後、本体の車載事業を成長軌道に乗せた。そして、永守会長のお眼鏡に叶い、入社3年で社長に大抜擢された。
毎週、吉本社長ら「C(チーフ)」の肩書きを持つ幹部5人による「COO会議」を開き、最終判断を永守会長に仰ぐ方式が採られた。永守会長は「(役割分担は)まずは7割(永守)と3割(吉本)でいくが、数年かけて逆転させていく」と、段階的に権限を委譲するとしてきた。
しかし、未曾有の危機に直面している今、再び永守氏が前面に出てきた。「今は会長の立場だが、しばらくは吉本社長と『共同社長』のつもりで取り組む」と語った。