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煽り男とガラケー女 2人に対してむいた牙も怖かった

送検される宮崎文夫容疑者(時事通信フォト)

 衝撃的な映像とともに日本中が怒った事件。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。

 * * *
 猛暑の夏である。そのせいで頭がカッカとしていたのかなんなのか、やたらと沸点の低い男が常磐自動車道で煽り運転、無理やり停止させた乗用車の運転手を殴りつける事件がおきた。

 8月10日、事件に巻き込まれた被害者はすぐに警察通報、一部始終を克明にとらえていたドライブレコーダーのデータを提出し、警察も捜査に乗り出した。また、この被害者の行動はそれだけにとどまらなかった。同日、テレビ朝日が運営する映像・写真投稿サービス「みんながカメラマン」に動画データを投稿。それが12日に同局のテレビ番組で取り上げられ、ネットニュースにもなったのである。

 そこから先は、本当にあっという間の大拡散だった。

 加害者の凶暴性と被害者の恐怖が臨場感たっぷりに伝わってくる動画である。ネット上では「ありえない」「許せない」「一刻も早く逮捕を」といった声が巻きおこる。テレビ朝日以外のマスコミも、そうしたネットの声に呼応するかのように、我先に事件を詳細報道。報道で新事実がわかるとまたネット上で声をあがり、マスコミもさらなる報道に熱をあげた。最終的には事件から1週間と少し経った18日に、加害者の男が傷害容疑で、その男と事件現場でも一緒にいた女が犯人隠匿容疑で逮捕され、ひとまず一件落着となった。

 この一連の事件と騒動で、我々が得たものは確実にあると思う。自動車運転中にこうした煽りなどを受け、車を停めさせられたとしても、絶対にドアや窓を開けてはならない。すべてをキーロックし、できれば車を路肩に停め、すぐに警察を呼ぶ。相手が何をけしかけてこようが、それに反応はご法度。世の中にはまったく話の通じない、頭のいかれた人間もいるのだということを前提として、冷静に対処しなければならないのだ、と。

 こうした対処法を、警察OBなどの専門家に説明してもらい、解説したテレビ番組も多かった。もしものときの心の準備をあらためて確認した視聴者は大勢いたと思う。また、今回はとにかくドライブレコーダーの活躍が大きかった。自家用車に未搭載の人で、これを機に設置を考えた人も少なくないだろう。

 被害者にとってはとんだ災いだったが、彼の積極的な行動の結果、事件は解決。加えて、日本中のドライバーに安全を考える機会を提供したという意味で、プラスの意味が確実にあった。

 以上を踏まえた上で、今回、やっぱり言葉にしておきたいことがある。事件そのものも怖かったが、同じぐらい怖いことがあった。事件報道などに刺激されてマイナスの感情を露わにした我々の側の感情の高ぶりである。それは十分に怖いレベルにあった、といえるのではないだろうか。

 今回はありがちなマスコミVSネットという対立にはならず、マスコミもネット民も基本的に同じ方向をむいて、事件に対して憤っていた。いや、事件というよりも、「煽り男」と「ガラケー女」の2人に対して牙をむいた。

 2人の加害者がやったことは論外である。しかし、冷めて言えば、軽い傷害事件でもある。もちろん、もっと大きな事故などにつながった危険性もあっただろう。が、やった事実そのものは乱暴な煽り運転と、グーパンチ数発の暴力沙汰。裁かれるべき犯罪行為であるとはいえ、それで日本中が「許すまじ!」と熱狂し続けていたのは、けっこうな異常な事態だったと思うのである。

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