84才まで生きた杉田玄白

蘭学者の杉田玄白は84才まで生きた(写真/AFLO)

 そもそも、江戸時代に生きた人たちの寿命はどのくらいが平均だったのだろう。一般的に江戸時代の平均寿命は32~44才とされているが、これには“マジック”が隠されているという。

「当時は新生児・乳児死亡率が高く、生まれてすぐ亡くなる子供が多かったことで数字としての平均寿命は短くなっています。一方で、幼少期を乗り越えた人は長寿になることも珍しくなかったのです」(医療ジャーナリスト)

 つまり、病気にかかることなく成人できれば、その先は現代に劣らないほど長生きできたということが真相なのだ。

 しかも、「長く生きたい」というモチベーションが高まったのも江戸時代だったという。

「戦乱の世が終わって訪れた平和な時代だったため、社会も安定し、人々の生活も落ち着いたものになった。民衆も常に死と隣り合わせだった戦国時代とは一変、観劇やお伊勢参りといったレジャーが誕生するなど、生きることが楽しめる時代に変わっていった。そんな中で、『人生を満喫するために最も大事なのは健康』だと人々が気づき、長生きの秘訣に関する研究も盛んになったのです」(中村さん・以下同)

 当時の状況は現代日本に非常に近しいものがある。中村さんが指摘する。

「戦争の時代が終わり、安定した世の中になった今の世は、江戸時代と状況が非常に似通っていると思います。江戸の世で健康長寿を成し遂げた人たちの暮らしぶりから学べることは非常に多いのです」

 高齢者の暮らしぶりも、重なる点が多い。江戸時代にはある一定の年齢になると家督や仕事を子供に譲り引退する「隠居」の制度があった。現代でいえば「セカンドライフ」、当時はいわゆる「ご隠居さん」。隠居制度は明治まで続くことになるが、悠々自適に暮らしたり、趣味や新たな事業を始めるなど、第二の人生への区切りとして機能していた。

 たとえば元禄期(江戸前期)に生きた松尾芭蕉は40才を前に隠居生活に入り、本格的に俳句を行うようになったとされる。『おくのほそ道』に代表されるその後の活躍ぶりはご存じの通り。死の直前まで旅を続けた。

 また、千葉県出身の伊能忠敬は50才で隠居、なんとそこから江戸へ出て天文学や測量法を学んだという。幕府の命で全国の沿岸を測量し、「大日本沿海輿地全図」を完成させるという大事業を成し遂げている。享年73の大往生だった。

 これらの人物は、まさに「生涯現役」を実現した。むろん年齢を経ても健康でなければ成し遂げられなかったはずだ。このような健康長寿が江戸の世に実現できていた背景には、医療の充実がある。

◆江戸時代の医療とは

関連記事

トピックス

夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
《セクハラに該当する行為》TOKIO・国分太一、元テレビ局員の年下妻への“裏切り”「調子に乗るなと言ってくれる」存在
NEWSポストセブン
1985年春、ハワイにて。ファースト写真集撮影時
《突然の訃報に「我慢してください」》“芸能界の父”が明かした中山美穂さんの最期、「警察から帰された美穂との対面」と検死の結果
NEWSポストセブン
歴史学者の河西秀哉氏
【「愛子天皇」の誕生を希望】歴史学者・河西秀哉氏「悠仁さまに代替わりしてから議論しては手遅れだ」 皇位継承の安定を図るには“シンプルな制度”が必要
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「給料もらっているんだからさ〜」国分太一、若手スタッフが気遣った“良かれと思って”発言 副社長としては「即レス・フッ軽」で業界関係者から高評価
NEWSポストセブン
ブラジル訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《クッキーにケーキ、ゼリー菓子を…》佳子さま、ブラジル国内線のエコノミー席に居合わせた乗客が明かした機内での様子
NEWSポストセブン
”アナウンサーらしくないアナウンサー“と評判
「笑顔でピッタリ腕を絡ませて…」元NMB48アイドルアナ・瀧山あかねと「BreakingDown」エース・細川一颯の“腕組み同棲愛”《直撃に「まさしくタイプです(笑)」》
NEWSポストセブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
インドのナレンドラ・モディ首相とヨグマタ・相川圭子氏(2023年の国際ヨガデー)
ヨグマタ・相川圭子氏、ニューヨーク国連本部で「国際ヨガデー」に参加 4月のNY国連協会映画祭では高校銃乱射事件の生存者へ“愛の祝福”も
NEWSポストセブン