50才で隠居してから大活躍した伊能忠敬(写真/AFLO)

「共通の教科書も検査機器もない時代ですが、当時の医師たちが病状を熱心に観察したり、意欲的に実験を積み重ねたりした記録は、現代の医学の基礎にもなっています。治療するというよりは、痛みを和らげるような民間療法が中心ではあったと考えられますが、それがのちに科学的裏付けをもって進歩していったのです」

 当時は「漢方医」という、今でいう内科医のような存在が地域ごとに存在し、病気やけが、そのほかの不調を診ていたという。

「診療科も分かれておらず、ひとりのお医者さんがすべての病気を網羅していた。だから、今より勉強も大変だったはずです。また、漢方というと中国のものをそのまま使っていると思うかもしれませんが、実は海外の知見をもとに江戸の医師たちが日本人の体質に合うようアレンジし、日本独自のものとして発展したのです」

 しかも江戸が発端となった医療や薬は当然のことながら、日本人に向けて作られたものだ。現代の世界的ビッグデータに基づいた医学や健康法が、しばしば日本人の体質に合わないのと違って、どれもわれわれの祖先が“体を張って”効果を証明してきた健康長寿の知恵である。

 そんな江戸の医師の中でも名医として伝えられるのが、前述した香月牛山だ。

「1656年に筑前遠賀郡植木町(現・福岡県直方市)で生まれた牛山は若い頃、貝原益軒に儒学を伝授された後、豊前中津藩の藩医である鶴原玄益に医学を学んだ大変な勉強家です。医師になったのは30才。豊前中津候である小笠原氏の侍医として14年間活躍したのち、京に上り、ほかの医者が治せなかった皇族の難病を治したことで、その名が一躍全国に広がりました」

 彼の23冊ある著書の中でも、高齢者の「食事」「常備薬」「性生活」までを指南した『老人必用養草』は現代にも通じる内容だという。

※女性セブン2019年9月5日号

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