李政権はこのことを問題視し、翌年、番組制作に関わっていたプロデューサーやディレクターなど6人を、農林水産食品部長官への名誉毀損の疑いで逮捕し、「調査報道チームの解散」「反発する者への解雇を含む懲罰」など厳しい措置を取りました。
こうした政権によるテレビ局への介入は、朴槿恵政権時代も続き、李・朴政権の9年間で、MBCでは10人が解雇され、200人以上が懲罰を受けて窓際に追いやられています。
ところが、朴槿恵が退陣し、2017年5月に文在寅政権が誕生すると、状況が一変しました。
MBCの新社長には、過去にストライキの先導者と見なされて解雇された同局プロデューサーが就任。ストライキに参加していた局員たちが幹部に抜擢され、参加しなかった前政権寄りの局員たちが、逆に窓際に追いやられたのです。
なぜこんなことが起きたのか。そこには韓国の公共放送の歪な仕組みが存在します。MBC、KBSともに、局の運営には「放送通信委員会」という大統領直属の組織が介入しており、委員会メンバーの過半数はその時々の政権が任命する。そして、その委員会が社長人事を決定するのです。
実質的に大統領がKBSとMBCのトップの人事権を握っているわけです。
前政権時代、テレビ局の過激な反政府闘争を見てきた文大統領は、公営放送の人事を徹底的に政権寄りにした。保守政権時代にストライキを重ね、局内で冷遇されてきた人物をトップに登用したのです。