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失明や命の危険も、知っておきたい帯状疱疹の基礎知識

夏に多く発症しがちな帯状疱疹(写真/アフロ)

 今夏も厳しい暑さが続く。遠出などをしたお盆明け頃は、どっと疲れが出て、高齢者も体調を崩しやすい時期だ。この時期に多い病気の1つに帯状疱疹がある。特に高齢者がかかると重篤化しやすく、特有の痛みが10年以上続くこともあるという。

 しかもリスクが上がるのは50代から。老親だけでなく疲れ気味の介護家族も注意が必要なのだ。まずは帯状疱疹についてよく知っておくことが肝要。まりこの皮フ科(神奈川県)院長の本田まりこさんに聞いた。

◆症状を長引かせない! 高齢者は早期治療が大切

 帯状疱疹の原因となるのは水痘・帯状疱疹ウイルス。最初に感染し発症する時の病名は「水ぼうそう」で、多くが子供の頃にかかる病気だ。

「水ぼうそうを発症して増殖したウイルスは、治癒後、神経細胞が集合する神経節に入り込み、そこに潜むのです。同時に体には、このウイルスに対する免疫ができるので、基本的には二度と水ぼうそうにはかかりません。つまり免疫機能がしっかり働いている間は、神経節に潜むウイルスも息を潜めているわけです。

 ところが年を取ったり病気や過労、ストレスなどの影響で免疫力が低下すると水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活性化し、発症するのが帯状疱疹です」(本田さん・以下同)

 帯状疱疹はまずピリピリとした痛みやかゆみから始まる。

「これは前駆痛と呼ばれ、神経節の中で再活性化したウイルスが、神経を破壊しながら伝って皮膚表面に出てくる痛み。4~5日から1週間続きます。続いて赤い小さな発疹が現れます。神経に沿って出るため、普通は体の左右どちらかに、帯のような形で現れます。やがて発疹の上に水ぶくれができ、小豆大に。初めは透明の水ぶくれが次第に膿になり(膿疱)、破れてただれや潰瘍になります。

 この段階までは人に感染する可能性があるので、水ぼうそうにかかったことのない子供や妊婦さんとの接触は避けましょう。さらに1週間くらいのうちに膿疱はかさぶたになり、これがはがれ落ちると治ります。ここまで約3週間。痛みもだいたいここで治まります」

 ただしこれは、治療せずに自然治癒した場合の一般的な経過。早めに抗ウイルス剤などによる治療を始めれば、皮膚症状や痛みも軽症ですむ。

 ところが高齢者の場合、気づかずに治療が遅れるケースも多い。衰弱がひどい場合は皮膚症状が全身に出たり、痛みが強かったりして、入院治療になることもあるという。

「皮膚症状がすっかり治った後に痛みが残る後遺症『帯状疱疹後神経痛』も高齢者に多く、60才以上では5~30%の人が悩まされます。数か月から10年以上続くケースもあります。帯状疱疹後神経痛に移行させないためにも、少しでも早い段階で皮膚科を受診し、治療を始めることが大切です」

【表】帯状疱疹は50代から発症リスクが急増

◆合併症にも要注意! 重病が隠れている場合も

 最初にかかった水ぼうそうのウイルスは、ほぼ全身の神経節に潜伏しているので、帯状疱疹は頭部、顔面、首、胸部、腹部、背中、下肢など、感覚神経のあるところならどこでも発症するという。

「特に多いのは胸部と頭部(額、目、上まぶた、鼻柱)。 発症している部位の神経が侵されるので、さまざまな合併症を起こすことがあります。たとえば耳周辺の帯状疱疹はめまいや難聴、顔面神経麻痺、味覚障害など。鼻柱を含む額や目の上の場合は角膜炎やぶどう膜炎、視力低下、悪化すると失明の可能性も。

 また、ウイルスが脊髄の深部まで及ぶと運動麻痺や筋の萎縮、ごくまれに脳にまで達すると脳炎や髄膜炎を起こし、最悪は命の危険もあります」

 特に注意したいのは、帯状疱疹が発症する背景に、別の病気がある場合だ。

「たとえば糖尿病やぜんそくなどは免疫力が低下しやすく、アトピー性皮膚炎や膠原(こうげん)病、ネフローゼ症候群、慢性腎不全などは治療の副作用で免疫力が低下します。さらに帯状疱疹が発症した近くにがんが隠れている場合も。帯状疱疹を発症した後は、健診や人間ドックで調べてみることをおすすめします」

 ちなみに糖尿病は感覚麻痺が起こりやすく、帯状疱疹の初期の痛みにも気づきにくいので要注意だ。

※女性セブン2019年9月5日号

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