ぼくを育てることは、とても大変だったと思うが、父は父なりに充実した人生を送ったようにも思う。経済的な困窮や妻が心臓病であるという現実のなかで、子どもを育てる喜びや苦労が、心の支えになることを、ぼくも親になって知った。
母が他界した後、父は東京で一人暮らしをしていた。ぼくは、茅野市に丸太小屋を建て、父を呼び寄せた。丸太小屋は父の名をとって「岩次郎小屋」と名付けた。それから10年間、ぼくと妻、子どもたちと三世代で暮らした。
最後は、ぼくの子どもたちに、手足をお湯で洗ってもらい、ふるさとの大好きな、高橋竹山の津軽じょんがら節のテープを聞きながら、88歳の人生の幕を引いた。
父に教わった「にもかかわらず」という生き方は、ずっとぼくのなかに根付き、困難を生き抜くための力となっている。
先月、『サワコの朝』(TBS系)というテレビ番組に出演し、阿川佐和子さんに父に教えられたことや鎌田式スクワットとかかと落としなどについて語った。
長年の腰痛もちだという阿川さん、スクワットで腰痛を改善できたらいいが、スクワットが苦手だとか。スタジオでは、椅子の背もたれなどにつかまりながら行う簡単なバージョンのスクワットをお教えした。
そのときのことを、彼女は『婦人公論』の「見上げれば三日月」という連載に書いている。「タヌキのようだったお腹がすっかりへこんでしまった」と、ぼくの体型変化に驚きつつ、ご自身もスクワットを始め、2日が経つという。