ライフ

【著者に訊け】夏井いつき氏 『子規365日』

『プレバト!!』でおなじみの夏井先生

【著者に訊け】夏井いつき氏/『子規365日』/720円+税/朝日新聞出版

『プレバト!!』(毎日放送)の熱血指導でも御馴染の夏井いつき氏を始め、松山市民は正岡子規のことを〈子規さん〉と、親しみを込めて呼ぶという。

「『俳句中興の祖』や、病と闘った偉人ではないんです。そもそも俳句は最も俗な生活と共にある文芸ですし、この本も『痛い痛い』って喚いて泣いて、周囲に散々我儘も言った生身で身近な子規さんの姿を、共有できる本にしたかったんです」

 題して『子規365日』。子規が遺した約2万5000句余り(子規記念博物館データベースより)の中から、1日1句、全て違う季語を用いた句を選び、実作者の目で解説した、元は朝日新聞愛媛版の人気連載だ。元旦から大晦日まで、多くは病床にあった子規の目や耳がとらえた一瞬の輝きを夏井氏は丁寧に読み解き、あくまで句そのものと向き合おうとする。明治35年秋、34歳で夭折した子規の失意や懊悩など、背景は後からついてくるとばかりに。

「俳句を作家論で読むか、作品論で読むか以前に、そもそも私は正岡子規の研究者ではありません。それでも1句1句、実作者として丁寧に出会い直すことはできるかもしれないと思って、この連載をお引き受けしました。

 例えば私はある看護学校で国語を教えていた頃に、俳句のことを何も知らない生徒に作者名を伏せた句を幾つか読ませてみたことがあるのね。その中に本書で紹介した〈いくたびも雪の深さを尋ねけり〉もあって、『これは新しい長靴を買ってもらった子供が雪を楽しみにしている句だ』とか、『彼とスキーに行く約束をしたんだろう』とか、実に様々な解釈が出てきました。その上でその句が詠まれた背景を話すと、『先生、鳥肌が立った!』と言う子もいましたが、俳句ってそれでいいと私は思うんです。

 作者から提示された17音が作品の全てなので、そこに子規の人生を重ねて読んでも、自分に引き付けて読んでもいい。そうした自由な読みが作品を貶めるどころか、むしろ豊かにしているとすら思うんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン