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【著者に訊け】夏井いつき氏 『子規365日』

「『プレバト!!』でも俳句は敷居が高いと思いこんでいる人に、ちょっとした添削を実際にやって見せると、皆さん、作者の見た景色や音や匂いが五感に流れ込んでくるような経験をなさる。一見すると芸能人のリアクションを楽しむショーなのですが、助詞一つで景色が一変する日本語のメカニズムを知り、17音が溶け出す瞬間に出会うことで、そうか、俳句はマジックなんだと、実感して下されば嬉しいなあと思います。

 今まで私はそういうことをコツコツ本に書き、松山にいる暇もないくらい全国を回ってもきたのですが、そのコツコツを一気にブルドーザーのように押し広げてくれたのがあの番組なので、ありがたく思っています(笑い)。俳句がもたらす静かな知的興奮をより多くの方に伝えるのも、私、夏井の使命なので、番組はもちろん、できる限りの種蒔きをしていきたいですね」

 子規には教科書等でよく見かける痩せた横顔の他、旧制松山中学の後輩と野球に興じるユニフォーム姿の写真も残されている。司馬遼太郎が『坂の上の雲』で描いた〈軽快であり無邪気であり激烈であり執拗でありぬけぬけと明るい〉子規像に、夏井氏のそれも重なるとか。

「どちらか、ではなくどちらも、ですね。病と闘う子規さんも野球好きな子規さんも、私の中では難なく重なるし、政治家の次は小説家と夢を次々に変えた彼は、結核になって選択肢が狭まっても、終始好奇心をもって暮らします。

 その病身の自分すら受け入れる強靭な姿勢は決して俳句の性質と無関係ではないでしょう。それこそ物事を理科の観察みたいに細やかな目で見ないと、5音分の新しさなんて発見できないですよね。そうした態度が自分を客観視する目を養い、実人生においても苦難を客体化する強さを自ずと育んでいきます。絶筆三句の一つ、〈糸瓜咲て痰のつまりし仏かな〉なんて幽体離脱そのものですし、それはどんな俳句詠みにも共通の気質だと思います」

 つまり「俳句は、人生の杖になる」のだと!

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