ライフ

【著者に訊け】夏井いつき氏 『子規365日』

 例えば「元旦」を季語とした〈今年はと思ふことなきにしもあらず〉に、夏井氏は〈思わず「ふふ……」と共感する〉と解説を寄せ、既に生誕150年を迎えた子規と時空を超えて連なる奇蹟に、喜びを隠さない。

「季語は時空間を移動させてくれるんですよ。明治の子規さんと令和を生きる私たちが季語一つで繋がり、その日常や肌感覚に、同じ生活者として寄り添うこともできる。

 似たような句が頻出するのが短詩形文学の宿命である一方、上か下の5音分が新しければ句として新しくなれるのも俳句の面白さ。つまり常に新味を希求する性質を俳句自体が備えているとも言えます。芭蕉が不易流行と言ったように、いつの世も変わらない俳諧の精神が、私たちと子規さんを繋いでくれるんです」

〈作者の眼球に映った映像が俳句という言葉に翻訳され、読者はそれを映像として再生し追体験する〉〈たった一七音しかない俳句だが、そこに盛り込まれる情報量は侮りがたい〉とあるが、本書ではその情報を丁寧に辿ることで、作者の視線の動きや、僅か17音の中にもたゆたう時間の流れなどが、まざまざと再現されていく。

◆俳句は人生を救う杖になる

 また子規が一つの着想を複数の句に詠んだように、言葉の使い方一つでまるで違う光景が立ち上がるのも俳句だ。例えば〈馬ほくほく椿をくぐり桃をぬけ〉と〈椿にさはり桃にすれ〉を比較し、〈動詞のカラクリ〉を読み解く面白さを説いていく。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《子どもの性別は明かさず》小室眞子さんの第一子出産に宮内庁は“類例を見ない発表”、守谷絢子さんとの差は 辛酸なめ子氏「合意を得るためのやり取りに時間がかかったのでは」
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン
ファッションの面でも注目を集めている愛子さま(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《公務でのご活躍続く》愛子さまのファッションに感じられる“母・雅子さまへのあこがれ”  フェミニン要素で“らしさ”もプラス
NEWSポストセブン
Mrs.GREEN APPLEの冠番組『テレビ×ミセス』(TBS系)が放送される(公式HPより)
《ミセスがテレビに進出!》冠番組がプライム帯で放送される3つの必然性 今後、バラエティ進出が拡大する可能性も
NEWSポストセブン
5月20日の公務での佳子さま(時事通信フォト)
《第一子出産で注目》佳子さま、眞子さんの“お下がりファッション”ブランドは「ご家族で愛用」背景にあった母・紀子さまの影響【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットの幸せな日々》小室眞子さんは「コーヒー1杯470円」“インスタ映え”カフェでマカロンをたびたび購入 “小室圭さんの年収4000万円”でも堅実なライフスタイル
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン
常盤貴子が明かす「芝居」と「暮らし」の幸福
【常盤貴子インタビュー】50代のテーマは「即興力」 心の声に正直に、お芝居でも日々の暮らしでも軽やかに生きる自分でありたい
週刊ポスト
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
ホストにハマったAさんが告白する“1000万円シャンパンタワーの悪夢”「ホテルの部屋で殴る蹴るに加え、首を絞められ、髪の毛を抜かれ…」《深刻化する売掛トラブル》
NEWSポストセブン
西武・源田壮亮の不倫騒動から5カ月(左・時事通信フォト、右・Instagramより)
《西武源田と銀座クラブ女性の不倫報道から5か月》SNSが完全停止、妻・衛藤美彩が下していた決断…ベルーナドームで起きていた異変
NEWSポストセブン